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J.S.バッハの練習方法

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J.S.バッハの練習方法

コンクールや音大入試で必ず課題で演奏するJ.S.バッハ。

実は一番難しいと感じている人、苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。

特に複雑なフーガの譜読みや暗譜には一苦労される方も多くいると思います。

美しいバッハを本番の舞台で演奏する為には、十分な練習が必要です。

多くの方が取り組んでいるバッハは、人それぞれ様々な練習方法があると思いますが、

今回は私が普段している基本的な練習方法やアドバイスを書いてみたいと思います。

 

具体的な譜読みから、練習方法まで

①初見で全体を通す

まず全体を把握するために初見で最後まで通して弾いてみます。

初めての曲なのでボロボロで良いです!

とにかく止まらないで、間違っても先に進み最後まで弾き通す。

最初に全体像を感じてみましょう。

 

②楽曲分析をする

未だバッハの経験が少ない場合、最初は難しいと思いますが、

ある程度勉強したことがある方は楽譜に書き込みながら分析をしてみましょう。

使用する楽譜は原典版です(私は主にベーレンライター版を使っています)。

主題や対主題、各モチーフ、調性の把握、ハーモニー、カデンツ、全体の構造、アーティキュレーションを楽譜に書き込みます。

また舞曲の題がなくても、曲の中に舞曲の要素を盛り込んでいることが多々あります。

何拍子なのか、リズムの特徴、どの様な舞曲か、曲のキャラクターを想像してみましょう。

舞曲以外にも、喜びに満ちた祝祭的なもの、受難を表現している曲、またはパイプオルガンの響きを表現している等、

想像しながら分析をする時間はとてもワクワクします!

一人で分析をするのが難しい場合は、ぜひ先生と分析をしてみて下さい。

先生と分析することを積み重ねると、次第に一人でできる様になってきます。

(c) Fylde Borough Council; Supplied by The Public Catalogue Foundation

③譜読みと指使い

分析ができたら、実際に弾きながら譜読みをします。

譜読みをする時は片手に鉛筆を持ちましょう

音を読みながら、複雑な箇所には必ず指番号を書き込んで下さい。

これはとても大事です。

バッハの入り組んだ声部を処理しながら演奏することは非常に難しいので、

間違った指番号で弾いていたり、良くない癖をつけてしまうと、

技術的にも不安定な演奏になってしまうばかりか、後で修正する際に時間が掛かってしまい時間のロスです。

正確な指使いを、譜読みの段階で心がけましょう

余談で、バッハの主要な鍵盤曲を暗譜されていたデームス先生の平均律クラヴィーア曲集の楽譜を見せて頂いたとき、

指番号が全部に振ってありました!

 

④各声部の練習

譜読みが出来たら慌てずテンポにしようと思わず、ゆっくりなテンポで練習をしていきましょう。

まずはソプラノの声部だけ。そしてバスのみ。

各声部が把握できたら一緒に合わせ、3声以上の場合は少しずつ声部を増やしていきます。

この時、曖昧に弾かず、アーティキュレーションも付けて弾きましょう。

 

⑤声に出して歌いながら練習

次に少し難しい練習です。

一つの声部を弾きながら、別の声部を歌いましょう。

例えば、

1)ソプラノを弾きながら、バスを歌う

2)バスを歌いながら、ソプラノを弾く

3)ソプラノとバスを弾きながら、内声を歌う

この練習は皆嫌がるのですが、凄く効果があるので試してみて下さい!

最初は弾いている声部につられてしまい、音痴な自分に驚くかもしれません。

それでも良いんです!

1小節ずつからで良いので、確実に練習しましょう。

出来るようになると、全ての声部を同時に弾いた時に、

それぞれの声部を捉えながら、立体的に聴こえるようになります♬

 

⑥部分練習

そして技術的な部分練習を細かくします。

弾けていないのに、無理やり通し練習をしないようにして下さい。

どの曲もそうですが、弾けていないのに通しをしても意味がありません。

細かく、辛抱強く、丁寧に練習しましょう。

これが1番の近道です。

 

⑦全体を通す(または大きな区切り)

これまでの練習が出来たら、全体または大きなブロックごとに分けて、通してみましょう。

この時に縦のハーモニーと、横の流れが同時に聴こえていることが大事です。

調性の色彩やキャラクター、ゼクエンツやカデンツの弾き方等、②の分析を忘れず意識して演奏してみて下さい。

練習している最中にアーティキュレーションや強弱等で、別のアイディアが浮かぶかもしれません。

答えは一つなんてことはないです。

積極的に試してみて下さい♪

 

⑧暗譜

バッハの本番は本当に予期せぬことが起こったりします。

私は幸いバッハの暗譜で止まったことはないのですが、

コンクールの審査などでヒヤっとする場面に何度も会ったことがあります。

その度に「バッハを舐めたらいけない…」と自分に言い聞かせています。

バッハの本番がある場合、私は「これでもか!!」というくらい念入りに準備します。

暗譜は主に練習中に、良く頭を使い、耳を澄まし、身体で覚えますが、他の方法もご紹介したいと思います。

私の場合、上記の練習をしながら、机に向かって5線譜に書きます🖋️

楽譜を閉じたまま書くのはとても難しいのですが、音が頭の中で鳴っていないと書けません。

5線譜にそのまま楽譜通りに書くこともありますし、

3声以上の複雑なフーガの場合は、それぞれの声部を分けて、3声部の場合は3段、4声部の場合は4段使って書きます。

声部ごと分けると、それぞれの声部が歌や各楽器が鳴っているように見えてきます。

念には念を!!

縮小したコピー譜をポケットや鞄に入れて持ち歩き、外出先や歩きながら頭の中で音を鳴らし、

音が分からなくなったら、すぐに何処でも見れるようにしていました。

あとは毎回のレッスンで常に本番だと思って演奏すること、

できれば本番前に何度か人前で弾く機会を作っておくと尚、安心です。

 

まとめ

今日は基本的な練習方法とアドバイスを書きました。

「こんなに練習しなきゃいけないの!?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、これだけでは止まらず、楽曲を探求するためには、もっと深いところまで音楽的な追求をしていかないといけません。

バッハと鍵盤楽器(チェンバロ、オルガン、クラヴィコード)、バッハの声楽曲や管弦楽曲、

室内楽、キリスト教との関わり、聖書、修辞学、中世〜バロック時代の背景やその時代の芸術家、美術、建築、etc

終わりが見えないほど学ばないといけないことがありますが、知れば知るほど面白い世界です!!

ヨーロッパに行ってみると、この様な話を皆が普通に学校の廊下やカフェで話していて、

その探究心と尽きない知識の量に圧倒され、刺激をたくさん受けました。

どうかバッハの美しい音楽を奏でるために、日々の練習で内なる自分の音に耳をよく澄まして聴いて下さい。

 

最後に3人の大作曲家の名言です。

バッハの語源は小川だが、とんでもない。音楽におけるバッハは大河である(L.V.ベートーヴェン)
バッハの『平均律クラヴィーア曲集』を毎日糧とすること、そうすれば立派な音楽家になれる。(R.シューマン)
私はバッハだけを練習します。それが私の準備なのです。私自身の作品と練習することはありません。(F.ショパン)