ピアノか?電子ピアノか?
ピアノを始めるにあたり、「ピアノと電子ピアノ、どちらを用意したらよいですか?」
というご質問を時々いただきます。
私の考えは、可能であれば、ぜひ本物のピアノを持ってほしい、ということです。
もちろん、住環境やご家庭の事情により、電子ピアノを選ばれる方もいらっしゃいます。
趣味としてピアノを楽しむ場合や、限られた条件の中で音楽に親しむ第一歩としては、電子ピアノが役立つ場面もあります。
また趣味で楽しみたい!という方にとっては、電子ピアノで問題ないと思います。
しかし、
・コンクールに挑戦したい
・一生懸命練習し、確実に上達したい
・難しい曲にも取り組んでいきたい
と考えている方には、私は本物のピアノをおすすめしています。
なぜ本物のピアノなのか
最大の理由は、音とタッチの違いです。
本物のピアノは、鍵盤を押すとハンマーが弦を叩き、そこから無数の倍音が生まれます。
指の重さやスピード、鍵盤の深さによって音色は大きく変化し、「どう弾けば、どんな音が出るのか」を、耳と身体で学ぶことができます。
一方、電子ピアノは音がデータとして再生されるため、表現の幅や細やかなニュアンスは、どうしても限界があります。
この違いは、
・音を聴き分ける力
・指のコントロール
・表現力
といった、演奏の根幹に関わってきます。
そして、音の出し方やタッチに変な癖がついてしまう傾向があり、その癖を取るのは結構大変です。
小さいうちだからこそ、本物を知ることの大切さ
「もう少し大きくなってからでいいかな」
そう考えて、楽器選びを後回しにしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、小さいお子様の感覚は、大人が思っている以上にとても敏感です。
音の響き、鍵盤の重さ、指先に伝わる感触。
これらを自然に受け取り、吸収できるのは、まさに幼少期ならではの力です。
早いうちから本物のピアノに触れておくことで、音への感性や、無理のないタッチが自然と育っていきます。
もちろん、さまざまな事情で難しい場合もあると思いますので、決して強制するものではありません。
ただ、実際に指導していると、本物のピアノに触れているお子様の上達は、目に見えてはっきりと表れてくるというのは、紛れもない事実です。
先月スクールで発表会があったのですが、ある生徒さんが本番1ヶ月前にアップライトピアノをご購入されました。
いつもピアノを楽しそうに弾いている姿を見ているので、親御さんは思い切ってご購入されたそうです。
上達は見違える様で、音の質が変わり、何より弾いている本人が「気持ちよくて楽しい!」と、喜んでいたお顔が印象的でした。
また練習時間も自然に増えた様です。

上達すればするほど、差は大きくなる
初めのうちは、電子ピアノでも大きな違いを感じにくいかもしれません。
しかし、レベルが上がり、曲が難しくなるにつれて、
「電子ピアノでは思うように弾けない」
という壁に必ず直面します。
特にコンクールや本番のステージでは、日頃から本物のピアノで練習しているかどうかが、演奏にそのまま現れてしまいます。
また、繊細に神経を研ぎ澄ましながら使用するペダルの感覚も、実際は全然違うのです。
電子ピアノでコンクールは可能か
同業者やプロの方々とお話ししていると、「電子ピアノでコンクールに挑戦するために、どうしたら良いのか」と話題になることもあります。
確かに、コンクールはフルコンで演奏することがほとんどで、日常的に本物のピアノに触れていなければ、突然扱うには無理があります。
しかし、経済的な理由や住環境の問題で、すぐにピアノを購入することが難しいご家庭があることも、十分、先生方は理解しています。
そのような場合には、自宅では電子ピアノを使用しながら、週に数回はピアノスタジオを利用し、本物のピアノで練習することができます。
「持っていないから無理」と諦めるのではなく、環境を工夫しながら経験を積むことが大切だと思います。
普段と違う環境での練習
私自身は普段、グランドピアノで練習をしていますが、本番が近づくと、あえてスタジオやホールを借り、さまざまなピアノに触れながら練習しています。
ピアノは一台一台、タッチ、響き、鍵盤の感触がすべて異なります。
本番でどのようなピアノに出会っても対応できるよう、日頃から違いを体感しておくことは大切です。
これは、コンクールに挑戦する生徒さんにとっても同じです。
これまでも、生徒さんの中には本番前にホールを借りて練習を重ねている方が多く、状況に応じてホールでのレッスンを行うこともあります。
ホールという空間で音を出すことで、響きの違いや空間を身体で感じ、本番をより具体的にイメージできるようになります。
求め始めればきりがない世界ですが、限られた環境の中でも、目的や状況に応じてより良い練習方法を取り入れていくことは、とても大切だと考えています。
最後に
ピアノは、長い時間をともに過ごす大切なパートナーです。
上達したい、もっと表現したいという気持ちがありましたら、その想いに応えてくれる環境を整えることも、上達への大きな一歩だと思っています。
これからピアノを始める方へ、楽器選びで迷っている方の参考になれば幸いです。

