3つの基本要素
何度も読み返している演奏法の素敵な本のご紹介です!
ジャン・ファシナというピアニストであり、
音楽教育者であるフランスの方が書いた、
『若いピアニストへの手紙』〜技術をみがき作品を深く理解するために〜(音楽之友社)
ジャック・ルヴィエの先生でもあり、小澤征爾さんが推薦されているのも心から納得!
本質的なことが簡潔に分かりやすく書かれていて、
音楽家としての生き方も記されている一冊。
私が購入したのは2004年なので、もう20年前の本になります。
目次
ある人生
教育
自由さ、あるいは足かせのない音
演奏
リズム
音
様式
練習方法
補遺 ピアノ演奏のテクニックとピアノのメカニックな機能との相互関係について
演奏
この本の中の「演奏」は2ページですが、大切なことが凝縮されていて、
改めて一つ一つ見直すことを心掛けたいと思いました。
演奏を組み立てるにあたって、
本物の芸術家が必ず心がけている基本要素が3つある。1)リズム 作品の骨組みをなすもの
2)音 その作品を組み立てる素材
3)スタイル 作品の建築形態
多くの生徒が世界中からレッスンを受けに訪れ、欠点は皆、同じだったことが書かれています。
「どの生徒も分析不足で、そのために作品を理解しきれていない。
個人的な感情を表に出そうとするあまり、
彼らは楽譜に書かれていることや、
そこに宿っている精神を正確にたどらず、
音楽的フレーズを歪めてしまっている。」(P.41)
その分析が終わりなく非常に難しいのですが、
ジャン・ファシナが書いている3つの要素を突き詰めることで、
音楽の輪郭や、作品へのアプローチが明確になっていくと思います。
「リズム」は書かれている音価を守っても、
リズムと響きが結びついていないと作品が崩れてしまいます。
そして音は画家にとって絵の具の様で、
音色、音の表情は、音楽的な耳次第で決まること。
様式(スタイル)に関しては
分かりやすい例えを挙げています。
「ギリシャ神殿を建てるようにと依頼されて、
アジア風寺院を建ててしまう建築家のことを思い浮かべてみればよい」
この本を読んでいると、曲のレベルや、短い・長いは関係なく、
作品と真摯に向き合うことは尊いことで、
「練習時間」というのは、精神的で内面的な時間だと感じます。
「練習が嫌い」ということをよく耳にしますし、
技術的な面を克服するための反復練習は、確かに日々忍耐が伴います。
でも、その練習時間は、過去に生きた作曲家と向き合い、
この世とは思えない素晴らしい作品と向き合い、深く追求すればするほど、
苦痛と思っていた練習が、「音楽の魅力を味わう時間」に変わる気がします。
音楽への愛情がこもった『若いピアニストへの手紙』
ピアノではなく、別の楽器を学ぶ方にとっても学びが多い本です。
機会がありましたら、ぜひ読んでみて下さい♪