音とステージ
「音にその人が出る」
というのは真実で、その人自身の性格や想い、感情がそのまま出てしまうのが舞台の怖いところだと思います。
それは演奏元より、ステージマナーにも出てしまいます。
歩き方、姿勢、お辞儀の仕方、顔の表情、
そして普段から小さなことでも感謝の気持ちを持って生活をしていると、
演奏する感謝の気持ちも自然に舞台で現れます。
それは決して大袈裟なものではなく、
怖いことでもあり、とても魅力的なことだと思います。
最近、私の尊敬している大先輩のピアニストの方からお電話を頂き、
お話をさせていただいた時のこと。
言葉一つ一つの選び方や間の取り方、想う気持ちが電話越しから溢れ出ていて、
お話していて自分が恥ずかしくなってしまうほど、
品があり素敵なお話のされ方で、改めて感銘を受けました。
そのピアニストの方のコンサートが昨晩あり、
やはりステージマナーや演奏が素晴しく唸ってしまうほど…
人間性が全て音となり、舞台となる現実を目の当たりにし、
私自身もそうですし、生徒さんにも伝えていくことを怠ってはいけないなと反省しました。
私が中学生の頃にご縁を頂き、それ以降、ずっと心の支えになり、
長くお世話になっている大ピアニストの方で、お母様やお姉様も本当に素晴らしく、
毎回お電話も深呼吸をしてからでないとお話できない程、人間性に溢れている方。
コンサートのご案内や御礼は達筆な毛筆で書かれたお手紙が届き、
ピアノの練習で悩みなどありそうだと思うとお電話を下さって、ヒントを下さる。
コンクールにはそっと聴きに来て下さり、成長を見守って下さる。
私は一度もレッスンを受けたことがないのに、
ここまでして下さる先生は聞いたことがなく、心から尊敬している方です。
まさに人生のお手本の様なピアニストご家族で、お顔を思い浮かべると背筋がピンとします。
また同僚のピアノの先生とお話をしていた時に、
最近はピアノの注意よりも身だしなみをきちんと教える様にしている、と仰っていたことが印象的でした。
身だしなみがきちんとしていない生徒さんに限って、
詰めが甘かったり、フレーズの終わり方、音の処理の仕方が雑なのよ〜と仰っていて、
確かに思い当たるところがあると納得してしまいました。
私自身も改める部分があると日々反省で、
普段の生活が音にそのまま出てしまうのが音楽の怖いところなのです。
もちろん完璧な人間はいません。
何もかも息をするのも苦しいくらい、きちんとしないといけない、という訳ではなく、
最低限の礼儀やマナーは大切だなと思うのです。
コンサートもコンクールも、「演奏は一期一会」。
多くの大先輩方が仰る通り、技術だけではなく、
人間性を深めることをしていかないと、音楽を磨くことは不可能だと思います。
改めてそう感じる、心の奥底に記憶が殘る素敵なコンサートでした。