強い指をつくるための幾つかの方法 <マムシ指編>
今日は『ピアノを弾くための指作り』についてお話していこうと思います。
特に、「マムシ指」と言われる方にとって、とても大切な内容ですので、是非お付き合い下さい。
子供さんや、ピアノ入門〜中級の方で、
「指が弱い」「指が回らない」「音が立っていない」と先生に言われたり、自分でも感じたことがある方、案外多いかと思います。
私自身も、指が弱いと自覚して悩んだ時期がありました。
ピアノの鍵盤はたった約50~60gなので、筋肉質でマッチョな指を作る必要はなく、
逆に「硬い」筋肉がありすぎると、指の軽快さが鈍るので注意が必要です。
しかし、ピアノを弾くための強い指(支えられる指)を日々鍛えて作っていかないといけません。
「マムシ指」と言われる、いわゆる親指の第2関節(MP関節)が凹んでしまったり、
他の指の第1関節(DIP関節)が、くにゃっと凹んでしまう癖がついてしまう方がいます。
特に子供さんの指はまだ柔らかいので、マムシ指の癖がある方が多くいらっしゃいます。
また、入門者の方で電子ピアノで練習している方、癖が強く状態が良くないピアノで練習していると、この様な癖が定着しやすいようです。
マムシ指で起こりうる弊害
*上手く指を支えることができないので、強弱の加減が鈍くなる
*音がはっきりしない。芯のある音が鳴らない。音が通らない。
*和音を弾くのが苦手
*余計なところに力を入れてしまうため、腱鞘炎のリスクを高めてしまう
*指の動きが鈍くなり、速いパッセージが弾きづらい
*疲れやすい。曲によっては弾き通せない
思いついたものを挙げると、演奏する上で良いことがないどころか、腱鞘炎や腕を痛めてしまうので、
気づいたら早めに改善することをお勧めします。
改善には筋トレと同じく日々の訓練が必要なので、すぐに身に付くわけではなく根気と辛抱がいりますが、
工夫をしながら気をつけていければ、徐々に改善できます。
しかし、気をつけて練習していないと、余計な筋肉を使ってしまい、
また別の癖がついてしまうことがありますので注意が必要です。
辛抱強く「改善しよう!」という気持ちを持ち、集中して取り組んでみて下さい。
癖がつくと治すのに3~5倍の時間が掛かってしまうと、よく言われます。
しかし実際教えていると、運動神経が良く、脳の伝達が早いお子様は、
1週間後のレッスンで治っていることもありますし、
指質の問題や、指先の末端神経の成長が遅い方は,
なかなか反応せずに数年かかってしまう方もいらっしゃいます。
個人差はあるのですが、放置は身体のためにも厳禁。
改善していくものなので、意識をして練習してみて下さい♪
マムシ指を改善する具体的な方法
1)輪ゴムを引っ掛けて練習する
2)マムシの箇所にテーピングをして練習する
3)テーピングで改善しつつある場合は、指サックを装着する
4)段があるところに猿の手の様に指を引っ掛ける
5)小さなボールを握って感覚を養う
1)の輪ゴムの練習
第1関節に輪ゴムを引っ掛けて、片方の手で輪ゴムを持ち、伸び縮みするゴムの弾力を使いながら第1関節をゆっくり動かします。
その時に、手首や腕、肘に力を入れないように、指先の感覚が大事です。
感覚が分かってきたら、第1関節より先端に近い方に引っ掛けて、同じく片方の手で輪ゴムを持ち、同じように練習します。
2)テーピング
少し太めの医療用のテープで、マムシの箇所を2回ほど巻き(血行が悪くなるほど、強くは巻かないこと)、正しいフォームに固定します。
そして、テーピングをしたまま、ゆっくり弾く練習をしてみましょう。
正しい姿勢で、頭の先から背筋はまっすぐ、無駄な力を入れずに指のフォームを意識してみて下さい。
この方法は即効性があり、この方が弾きやすいという生徒さんが多くいます。
3)指サック
文房具屋さんで買えるゴムの指サック(ちょうど第1関節のところに巻ける大きさの物が売っています)を、
関節のところに付けて弾いてみる、またはテーブルの上で弾く様に動かしてみる、こちらも意識できる様になり効果的です。
4)指を引っ掛ける
猿が木にぶら下がっている様に、第1関節を段差があるところに引っ掛けて(私はよくグランドピアノの蓋を使います)、
肘をダランと落とし、指先をフックの様に引っ掛けます。そして腕をゆらゆら左右に動かす練習をレッスンの時にします。
こちらは少し高度なので、指先の感覚が分かる様になったら練習してみましょう。
はじめは先生が横について脱力ができているか確かめ、フォローしてあげることで感覚が掴めてきます。
お家でも親御さんがフォローしてあげて下さい。
5)小さいボールを握る
こちらは柔らかいものと、ピンポン玉の様な少し硬めのものを使います。
先ずは柔らかいもの、ボールがなければ、ぬいぐるみでも良いです。
ぎゅっと握って指先の感覚を養います。その時にマムシにならない様に、指先から徐々に圧を加えて握ってみて下さい。
その後は、感触が全然違う硬いボールを指先で掴んでみましょう。
この練習の直後に鍵盤で弾いてみると、音の鳴り方が変わります。
まとめ
簡単ではありますが、5つの方法を書いてみました。
他にも方法は様々あるのですが、試しやすく効果が高いものを書いてみました。
人によって癖や弱点が違うため、細かいところは実際、目の前で見てみないと分からない部分があります。
テーピングを外し、指のフォームがしっかりしたと思ったところで、
実際演奏してみると、音の立ちが良くなるまでには、
身体全体の使い方も関係してくるので、時間が掛かり奥が深いものです。
しかし、今日ご紹介した方法の中には、ピアノを弾かないでも練習できるものがあります。
隙間時間など思いついた時でも良いので、第1関節を動かす練習をしてみて下さい。
巨匠マルタ・アルゲリッチさんは、「良い音を出すためには第1関節が重要」と語っています。
指は勝手に指が動くのではなく、必ず脳が指令を出して動きます。
脳の伝達が上手く指に届く様に、短時間でも良いので、「集中して」少しずつ練習してみて下さい。
慌てずに、根気よく続けていけば必ず改善できますので、先ずは試してみて下さいね♪
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