イタリアで経験した譜めくりのアルバイト!
イタリア留学中は、練習と学校の授業、本番に明け暮れる日々で、
アルバイトの時間は全くなかったのですが、
唯一、喜んでお引き受けしたアルバイトは歌劇場の譜めくりのお仕事でした!
日々世界を飛び回り、活躍されている一流演奏家たちの譜めくり、それはそれは素晴らしい経験で、
ほぼ毎週コンサートの譜めくりの為に歌劇場に通い、
真近で演奏家の呼吸や音楽を聴ける学びの場でした。
幸運なことに10年ほど譜めくりのお仕事をさせて頂き、
意気投合した演奏家たちとコンサート後にお食事に出かけることもありました。
コンサート前のリハーサル中に、自分の解釈について熱く語るお話を聞けたことや、
休憩時間の過ごし方、主催者とのコミュニケーションなど垣間見れたことも勉強になりました。
印象に残っている譜めくりは数えきれないほどたくさんあるのですが、
Sir.アンドラーシュ・シフさんの室内楽のコンサート後には、
「あなたの譜めくりは音楽的でした。ありがとう!」
と握手して仰って頂いたことは、一生の宝物です。
チェリストのヨーヨ・マさんの譜めくりでは、演奏前からハイテンションで舞台裏で踊りだし、
音楽するのが待ち遠しいというエネルギーを私も浴びて、演奏前からワクワクしました!
しかしテレビ中継が入るライブだったので、譜めくりを間違えたら大変なことになる…
というプレッシャーで、自分が演奏する時より緊張したことを憶えています。
観客席の熱いエネルギーは舞台まで感じるもので、その相互作用で演奏は一期一会の演奏になり、
観客の集中力と熱い視線は、今でも肌に感じるように記憶に残っています。
最近はiPadで自分で譜めくりできる様になりつつあるので、少しずつ譜めくりのお仕事もなくなってしまうのでしょうか。
学生さん達にとって一流と触れ合う貴重な場は、レッスンでは味わうことができない経験になるので、
どうかこの様な機会がなくならないで欲しいと願っています。
余談なのですが、この譜めくりのお仕事、アルバイト料を支払われることはなかったのですが、
その代わりにフィレンツェの歌劇場で行われるコンサートが、全て無料で入場できたことが留学生の私にとって最高でした!
また、完売のコンサートも毎回Platea席(S席)という素晴らしい席を確保して下さったり、
コンサート後に演奏家の方々とお話する機会を毎回いただきました。
「友達の分も良いよ〜」と快く言って下さる主催者の方もいて、友人達とコンサートを毎週聴きに行っていたのは、
今となっては夢のような思い出で、私にとってアルバイト料よりずっと嬉しい経験でした!
海外では一流の演奏家と触れ合う機会が日本に比べると多く、
その分、肌で学ぶ機会が多々あります。
是非、留学されている方、これから留学する方には、練習とレッスンに没頭するだけではなく、
たくさんの経験をして頂きたいなと切に願っています。
そしてイタリアでは音楽院に通う学生さんに、勉強のために積極的に譜めくりを依頼して下さることも有り難く、
日本でもその様な機会が増えれば良いなと思っています。
コンサート後、マルク=アンドレ・アムランさんと。